私たちは、吉祥寺は住みやすくて、良い街だと心の底から思っている。街を見渡せば、ショッピングや飲食で楽しいひと時を過ごしたり、緑に囲まれた公園でリフレッシュできる豊かな暮らしの生活シーンと、それらを求める多様な人々で溢れている。この生き生きとした街の様子を切り取れば、他の街が羨む生活・人生がそこにある。
一方で、そう遠くない未来に吉祥寺が吉祥寺でなくなってしまうのではないかという謂れのない不安を抱えている。これまでも吉祥寺の強みや弱みを分析し、他の街の事例の検討などを行ってきたが、議論は堂々巡りに終始してきた。街の魅力や活力を維持していくためには、個店レベルの小さなものから街区単位のものまで街の新陳代謝が欠かせない。吉祥寺に関わる誰もが、明日はもっと良くしようとする日々の工夫が不可欠だ。この延長線上にある最も大きな課題は、老朽化が進む建物更新であろう。私たちは、吉祥寺にとっての良き新陳代謝のあり方を、次の時代の姿を思い描きながら考えていかなければならない。
技術革新やグローバル化の進展が社会に大きな影響を与え、私たちの働き方や生活スタイルが激変し続ける中で、将来の街の姿をデザインすることは容易ではない。また、これまでわが国で行われてきた都市再開発がそのままモデルになるとは思えない。都市の魅力とはいったい何なのか、人を引き寄せるとはどういうことなのか、次の時代に街に求められるものは何かという本質的な議論から、これからの吉祥寺に相応しい街のあり方までをみんなで考え共有していきたいとの思いで、吉祥寺ポリシー(吉祥寺将来価値の創造)の検討を始めた。
吉祥寺の良さは、必ずしもメジャーではない小さな要素でも必ず満たしてくれる懐の深さにある。高級住宅もあれば、B級グルメもあり、キラリと光る雑貨店もあれば、アニメオタクも、アイドルファンも受け入れてくれる。
ライフスタイルがより一層多様になってくる社会においては、それこそが大きなポテンシャルを秘めているとも言える。決してナンバーワンではないかもしれないけれど、身近な魅力が感じられる。惹きつけられるうちに街に関わってみたくなる。何かに決めつけて枠をはめるのではなく、様々な人の関わりを受け入れてくれる懐の深さは、結果として吉祥寺の良さをさらに伸ばすことになる。
都市とは、人の思いの集合体である。今や、都市を創る立場の側から一方的な考えを押し付けられるほど単純な社会環境ではない。ではどうするのか。それは、吉祥寺が将来にわたって、誰もが関わりたくなる街であり続けることだ。活力のある街にはたくさんの行動する面白い人間がいるもの。また魅力のある街は活力を生む面白い人間を引き寄せるものである。
街にとって大切なのは街のつくり手である一人ひとりが、様々な立ち位置で、それぞれの事業やプロジェクトに熱い思いを抱いてチャレンジすることであろう。そのチャレンジをもっと面白がりながら。
吉祥寺は良い街だ。私たちは、この稀有な街が将来においても賑わいを失わないで欲しいという願いから、吉祥寺ポリシー(吉祥寺将来価値の創造)の検討に取り組み始めた。当初は、誰もが共感できる街のポリシーと、それに基づいたビジョンの構築が必要なことだと考え、様々なリサーチやディスカッション、フォーラムなどを行ってきた。
しかし、検討を重ねる中で、目指すべきビジョンを固定化し、それに向かって一致団結してやっていこうという考え方に疑問を抱くようになった。さらに、万人に共感される都市の将来像は存在し得ない時代になったのではないか、そもそも道路や広場の計画はあったが、今言われるような街のビジョンを共有したことがあったのかと考えるようになった
共有すべきことは遠い将来像ではなく、これまで積み上げてきた吉祥寺のにぎわいの正体(アイデンティティー)ではないか。改めて、吉祥寺の街並みをゆっくりと眺めてみてほしい。共有すべきポリシーは、すでに街が持っている。それを再確認し共有することをまちづくりの土台にすることで「何をすべきか」「何をしてはいけないか」が自ずと明らかになるのではないだろうか。
各地で再開発が行われ「都市の均質化」がどんどん進んでいる。吉祥寺は都市の均質化に飲み込まれてはならない。今必要なのは、先人たちが築き上げた他の街にはない吉祥寺のアイデンティティーを磨き続けることと、新たなものを生み出すためにスピード感を持ってチャレンジし続けることだろう。
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