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吉祥寺ポリシー
吉祥寺ポリシー

■目次
01 : 吉祥寺ポリシー

~吉祥寺将来価値の創造~
02 :吉祥寺の正体(アイデンティティー)

~都市の利便性と官能性の絶妙なバランス~
03 :取り巻く社会潮流

~メガトレンドを乗りこなそう~
04 :求められる考え方

~吉祥寺らしくあるために~
05 :面白がろう!

~誰もが関わりたくなる街に~

01:吉祥寺ポリシー ~ 吉祥寺将来価値の創造 ~

私たちは、吉祥寺は住みやすくて、良い街だと心の底から思っている。街を見渡せば、ショッピングや飲食で楽しいひと時を過ごしたり、緑に囲まれた公園でリフレッシュできる豊かな暮らしの生活シーンと、それらを求める多様な人々で溢れている。この生き生きとした街の様子を切り取れば、他の街が羨む生活・人生がそこにある。


一方で、そう遠くない未来に吉祥寺が吉祥寺でなくなってしまうのではないかという謂れのない不安を抱えている。これまでも吉祥寺の強みや弱みを分析し、他の街の事例の検討などを行ってきたが、議論は堂々巡りに終始してきた。街の魅力や活力を維持していくためには、個店レベルの小さなものから街区単位のものまで街の新陳代謝が欠かせない。吉祥寺に関わる誰もが、明日はもっと良くしようとする日々の工夫が不可欠だ。この延長線上にある最も大きな課題は、老朽化が進む建物更新であろう。私たちは、吉祥寺にとっての良き新陳代謝のあり方を、次の時代の姿を思い描きながら考えていかなければならない。


技術革新やグローバル化の進展が社会に大きな影響を与え、私たちの働き方や生活スタイルが激変し続ける中で、将来の街の姿をデザインすることは容易ではない。また、これまでわが国で行われてきた都市再開発がそのままモデルになるとは思えない。都市の魅力とはいったい何なのか、人を引き寄せるとはどういうことなのか、次の時代に街に求められるものは何かという本質的な議論から、これからの吉祥寺に相応しい街のあり方までをみんなで考え共有していきたいとの思いで、吉祥寺ポリシー(吉祥寺将来価値の創造)の検討を始めた。


02:吉祥寺の正体(アイデンティティー) ~都市の利便性と官能性の絶妙なバランス~

( 1 ) ほどほどが功を奏した吉祥寺

市が示した1962年の当初の計画案( 高山案 ) では、20万㎡を超える広範囲な対象面積と街区をまとめるスーパーブロック方式が提案されたものだった。しかし、商店街が分断されてしまうという地元の意見や、中央線複々線高架化事業の時期が差し迫る等の要因から実現可能な必要最小限の計画となった。その結果、当初の面積が半分以下に抑えられるとともに、スーパーブロックを採用しなかったことで大きな敷地の統合も行われずに従来の街区が残り、中小規模のビル群や路地が混在する状況が生まれた。このことが街に奥行やスキマをもたらし、多様な街並みや個性的な個店を生む源泉となった。再開発で駅前に大規模なビルが立ち並ぶ均質な街並みが増えていく中で、吉祥寺の個性があぶり出されてきているのではないだろうか。
近年、ロンドンやニューヨークなど成熟化を先に迎えた都市では、建築やインフラの読み替えや造り替えによる都市再生が進んでいる。そこでは、人の居場所を丁寧に作っていく取組みが行われており、画一的な理想を描く計画論からの転換が始まっている。

( 2 ) センシュアス・シティ吉祥寺

改めて吉祥寺の街を見渡してみると、吉祥寺には他の街にはない人間らしい動機に満ちた官能性があることを実感する。加えて、吉祥寺は都市生活に求める利便性や効率性を持ち合わせており、それらが絶妙なバランスで成立するという幸運を手にしている。単なる物的な充実を超えた、感性を刺激する街は、日々の暮らしに潤いを与えてくれる。
様々な観点から都市評価ランキングが行われている。その多くが、公的なデータを用いて生活インフラの充実度をはかるものか、人の主観に基づいた住みたい街のイメージを問うものである。これらと異なる「人々が豊かに楽しく暮らす都市が魅力的な都市である」という考え方を基に、人と人との関係性の豊かさと、人間が五感によって体験する身体性の豊かさを軸として調査したものが「センシュアス・シティ( 官能都市 ) 調査※」である。※LIFULL HOME‘S総研『Sensuous City[官能都市]』( 2015年 ) 」
この調査で示された最大のポイントは「センシュアス度が高ければ、そこに住むことの幸福度も高い」という関係。成長社会の計画先行ではなく、成熟社会に相応しい人間先行で都市を評価するこの考え方は、これからの吉祥寺のまちづくりにとって示唆に富んでいる。

( 3 ) 唯一無二の豊かな水辺

水辺は、日本人の心のよりどころ。古来より水辺で、涼をとったり、遊んだり、食事をしたりして過ごす文化があった。また、世界を見渡してみても、質の高い都市には必ずといって良いほど、海や湖、川など魅力的な水辺があるもの。水辺がある暮らしは、人々に官能的な魅力をもたらしてくれる。
四季折々の表情を見せる水辺や緑あふれる自然が、ターミナル駅や商業集積地に近接しているという幸運。再開発で都市がどんどん均質化していく中で、東京圏の郊外都市の中では唯一無二の豊かな水辺が、日常生活の一部として至近に存在する幸せをかみしめたい。
毎日の散歩にも、気取ったデートにも、どんな場面でも様々な気持ちを受け止めて、憩いを与えてくれる井の頭公園は、誰もが感じる吉祥寺のとっておきの場所。時代を超えてたくさんの人から愛されているこの公園は、100年先の未来にも変わらぬ姿であり続けてくれることだろう。

( 4 ) ファーストペンギンたちが築いてきた吉祥寺

周囲の良好な住宅環境と商店街、井の頭公園など、もともと人を引き寄せる素地を持っていた吉祥寺で、アイデアやセンスに優れた人がそれぞれの熱意をそそぎ込み、様々な事業を展開してきた。その積み重ねがジャズ、グルメ、雑貨、アニメなど吉祥寺の魅力に多様な彩を加えていった。
まず最初に挑戦した人たち( ファーストペンギン ) がいて、その人たちへの憧れとチャレンジ精神を併せ持った者たちが吉祥寺で追随し開業を目指す。これが、トレンドとなって街に活力を与えていった。どの時代にも、こうした存在が常にいたことが、吉祥寺に良き新陳代謝をもたらしてきた。
吉祥寺で自らが面白いと感じる事業を世に問いたいと願う多くのチャレンジャーたちによって、この街にしかないライブハウスや飲食店、雑貨店などがたくさん生まれ、街の奥行を創り出してきた。そこには店主たちの強いこだわりが散りばめられている。こうした魅力的な店が点在する街を巡れば、単なるモノやサービスに止まらない“発見” や“共有したくなる対象” と出会えることだろう。

( 5 ) 摩擦係数がバロメーター

歩き回ってもらうこと( 回遊 ) も含めて、少しでも長く街で過ごしてもらうこと( 滞留 ) は、街のにぎわい創りにとって最も大切な要素である。必要な行動や予定していた行動だけで、さっと通り過ぎて行ってしまう街ではなく、いろいろな場所にひっかかりながらより多くの時間を過ごしてもらえる摩擦係数の高い街でありたい。
吉祥寺の街を歩いていると、個店でも、商店街でも、気になる何かと出会い、ついふらりと立ち寄ってしまうことがある。楽しく街を歩き回ることができる変化のある多様な街路( 商店街 ) の広がりと多彩でオープンな店舗は、吉祥寺の大きな財産である。
「あの行列はなんだろう?」。「いいにおいは、どの店から漂ってきたのだろう?」「この細い路地の先には、何があるのかな?」。吉祥寺は、こだわりのお店やどこに出るのかわからない路地など、気になってしかたがない対象がたくさんあって、歩くスピードが自然と落ちてしまう摩擦係数が高い街なのだ。

( 6 ) 利便性と官能性が生み出した生活文化

吉祥寺には、日々の暮らしの中で年齢や性別を問わず様々な人が訪れる。人々の多種多様なニーズに応えるこだわりの個人商店、個性豊かな商店街、安心の大型商業施設といった多彩な店舗の存在が、日常の買物の利便性を大いに高めてくれている。
多種多様な店舗や飲食店のみならず、非日常のエンターテイメントやアミューズメントを日常の一部として捉えられることも暮らしを豊かにしてくれる吉祥寺生活の奥深さ。
演劇、音楽、アニメなど様々なサブカルチャーを発信し、街に取り込んできた吉祥寺。
住宅が立ち並ぶ中にも気の利いたお店が入り込む、少しだけ豊かな気分が暮らしに溶け込んでいる様子は、たとえ外から眺めるだけでも、街行く人にとって気になる存在。

03:取り巻く社会潮流 ~メガトレンドを乗りこなそう~

( 1 ) 良き郊外として生き残れるだろうか

住む場所と働く場所を分離することが最善の政策と捉えられてきた時代があった。東京都で働く人が急激に増え、より安く、より広い住宅を求めた東京都市圏の生活者が郊外に拡散した。住宅地は、都心部を中心として放射状に広がる鉄道網に沿うように郊外はドーナツ状に形成されていった。こうして栄えたベッドタウンの衰えが際立ってきている。高度成長期にマイホームを求めて移ってきた団塊世代が年金生活に入り、ものづくりの空洞化で働き手も集まらない。郊外都市の少子高齢化は、都心部以上のペースで進むと言われている。郊外はこのまま高齢者の街になってしまうのだろうか。
世界三大都市の一つと位置付けられている東京。その都心部の利便性や楽しみの要素はますます高まっている。都心は、社会基盤の水準が高いだけでなく、教育や医療、文化や娯楽など、人々の暮らしを豊かなものにする要素が充実している。このことに気づいた多くの住民が郊外から都心に移り始めている。一方、総人口減少とともに世帯構成人数も減り、単身者や共働き夫婦世帯は増加の一途を辿っている。こうした動きは職住近接を求める傾向を強め、都心回帰の流れに拍車をかけている。
人口構成、働き方や生活スタイルの変化により、郊外を求める世代はどんどん減っている。現在衰退しつつある郊外都市は、おおよそ都心から30キロあたりをドーナツ状に取り巻くように形成されている。それらの郊外と都心の間に位置する吉祥寺はどうなっていくのだろう。じわじわと郊外の衰退に飲み込まれていくのか、都心部の機能の一翼を担うのか。それともどちらでもない独自の道を歩むべきなのか。

( 2 ) 剥がされつつある都市の機能

未来に残すべき吉祥寺の重要な財産の一つは、多彩な個店を中心とした商業のにぎわいである。だが、インターネットやスマートフォンの普及などの情報技術の急激な発展により、これまでリアルな場所としての都市(マーケット)が担ってきたモノと情報の交換の場を、インターネット上の商取引やSNSなどによるコミュニケーションの世界が奪いつつある。
私たちが魅力として感じてきた “リアルな場所”ならではの価値とは何なのだろう。この問いに応えることは、これからの魅力的な店の在り方、ひいては活力あるまちづくりにおいて重要なテーマの一つである。

( 3 ) 激変する消費構造は、元には戻らない

社会環境は激変し続けている。少子高齢化の進展や世帯構成の変化に伴い、私たちの暮らしや働き方に対する考え方も変わってきている。私たちは、スマートフォンを手にインターネットの大いなる恩恵を受けつつ、リアルの場でも、これまで以上に立地や品揃えの良さ、24時間対応といったより利便性の高い流通チャネルを選択している。
これからの消費意識を大きく変え得るコト消費やシェアリング。その変化の根底には、物的には充足したが、さらに精神的な豊かさを求める感情があるのだろう。こうした社会の動きは、モノや空間、移動手段、労働力など様々な対象を飲み込んでいく。コトを提供するサービス業においても、グローバル化の流れと共に、今までにない新しい価値を提案するプレーヤーがどんどん現れてきている。
私たちは、日常生活において、今まで以上に自らの意思で物事を決めて、自分にとって最も合理的に利益となる行動を多様な選択肢の中で選ぶことができるようになってきた。こうした利便性の享受は、一過性のものではなく、不可逆の出来事である。景気の浮沈に一喜一憂する前に、パラダイムシフトに立ち向かう自分なりのスタンスを考えるべきだろう。

04:求められる考え方 ~吉祥寺らしくあるために~

( 1 ) イメージが固定化された街はつまらない

街としてアピールするには、世間の注目を集める「ランドマークや核になるもの」が必要だという意見や、街の特性を「○○の街」などの一言で言い表せないとアピールできないという意見がある。本当にそうなのだろうか。都市のイメージが特定のものに固定化されてしまうのは得策とは言えないのではないか。吉祥寺は多様な顔を持ち、一言では言い表せないからこそ魅力を放っている。
出来た当初は賑わうものの、そう時間が経たないうちに新しいエリアへと消費者の関心は移ってしまう。自己実現を目指して生き方が多様化し成熟した社会では、特定の商業施設が継続して人を引き寄せることが難しくなるのは当然なのかもしれない。
私たちは、吉祥寺が生活起点の街だということを忘れてはならない。精神的豊かさや生活の質の向上を重視する今日において、特定の施設やイメージに頼ることより、日常生活の豊かさを深堀していく方が、吉祥寺の特性と時代性がマッチするのではないだろうか。

( 2 ) 回遊性って、ホントに大事?

吉祥寺を語るとき「回遊性が高い」と言われる。駅を中心に放射状に商業地が広がり、その端部に大型商業施設があることで、買い回り、歩きまわりが楽しめると言われてきたが、消費行動が変化していく中で、今後もそれは同じだろうか。
SNS等で得た情報に基づいて消費行動を行うことや、何かを買うかよりも、どう過ごすのかが求められる時代では、これまでのような買い回りを中心とした歩きまわることが楽しみになるのだろうか。スマホを見ながらわき目も振らずに店を目指す人々の姿を見て、回遊しているとはいえない。
歩き回ることは出来ても、実は街中にはボーっと佇むことができる場所は意外に少ない。回遊性という言葉を妄信するのではなく、滞留の魅力づくりを考えながら、改めて街の過ごし方を考える姿勢が大切である。

( 3 ) 日常使いを究める

吉祥寺の商圏を広げたいという思いを持ち続けることは正しくないことなのかもしれない。今一度、商圏についての街の特性に目を向けるべきではないだろうか。
私たちの吉祥寺は、吉祥寺駅を中心とした半径5キロ圏の良質な生活者によって、街のにぎわいが築かれ支えられてきた。このエリアには緑豊かな環境に良質な住宅街が広がっており、ここに住まう人々の数は100万人を超えると言われている。
吉祥寺は、商業地のまわりに住む方々にとっての日常使いの街である。この地域の住宅環境の質を高め続けることが、街のにぎわいを維持・発展させる道であり、この魅力的な日常使いの街が、それ以外の地域の人には、非日常の街としての吸引力を持つのではないだろうか。

( 4 ) 人の質が、場の価値を高める

吉祥寺の魅力は個店の魅力であり、個店の魅力は人の魅力によるところが大きい。商いの原点は対面販売である。インターネット社会で生き残るためには、個店がそれぞれの個性を磨き続けることが大切である。商品の品質レベルが向上し、差別化が困難になってきた今、人を引き寄せる店の魅力として、そこで働く人が放つ魅力が大きな意味を持つ。店員が活き活きと楽しそうに働き、客との会話がはずむ店での食事や買物は小気味よい。一声かけることの大切さ。コミュニケーションの質は今後ますます重要になってくる。馴染みの店員さんがいる。そんな店がいくつもある街は、たくさんの人を引き寄せるだろう。

( 5 ) 「よそ者」歓迎

街の活力を維持、発展させるためには、新陳代謝が欠かせない。社会環境が大きく変わり続ける中で街の将来を考えるためには、柔軟で新しい発想が必要だ。そのためには吉祥寺の中だけで論じていたら答えに近づくことが難しいだろう。
これからのまちづくりでは、自分たちの街に新たな刺激をもたらしてくれる「よそ者」がどれだけ来てくれるかを意識する必要がある。外部の人との交わりによって、思いがけない発見や結びつきが生まれるかもしれない。良きライバルとして刺激し合い、創発が生まれることが街の新陳代謝につながっていく。
吉祥寺は、多様性の街だ。街の奥行や深さは、建物や通りの街並みだけで感じるのではなく、そこで事業を行う多様な人によってもたらされるもの。吉祥寺が、あらゆる境界線を越えて多様な人が集える場であり続け、私たちが吉祥寺の内外や立場を超えたチャレンジを受け入れるマインドを待ち続けることが出来たなら素晴らしい。

( 6 ) 吉祥寺ライフが売り

日本を訪れる外国人旅行者が求める嗜好は変化してきた。自らをツーリストではなく、インサイダーと捉え、ローカルの文化を知り、ローカルな人との交流を求めている。それは、 “生活するように街を楽しみたい”ということなのだろう。
吉祥寺には、インサイダー達を魅了できるちょっと刺激的で、ちょっとホッとできる生活シーンが散らばっている。吉祥寺ライフを体験してもらうこと。それこそが最先端の観光資源なのだろう。
日本人が「住みたい街」として高く評価している街に、インサイダー達が興味を抱くのは当然。だからこそ、私たちは、吉祥寺が住みたい街として高く評価されることにこだわり続けるべきではないか。

( 7 ) 規制された場所から、みんなの居場所へ

吉祥寺の公共空間は、楽しく、便利に使われているのだろうか。街を見渡してみると、ルールに縛られて、活かしきれていない空間があると感じることはないだろうか。多様な魅力と触れ合える街歩きは吉祥寺の魅力の一つだが、昼でも夜でも佇むこともできる選択肢があれば街で過ごす時間はもっと楽しいものになる。生活者や事業者が公共空間をもっとオープンに利用できたら、街のにぎわいはさらに豊かなものになるはずだ。
テクノロジーの進化は、生活スタイルはもちろん人の移動の仕方も変えていく。例えば、自動運転の技術は人より洗練した操作やマナーを発揮してくれることだろう。道路の境界が無くてもセキュリティが保たれる技術が出てくれば、柵を作らなくて良いのかもしれない。今まで安全や利便性のために機械の存在を前提に設計していたまちづくりも、人がまずどのように居られるのかを優先して考えるようになっていくだろう。
街の将来像は、ユーザーの経験の積み重ねによってつくられるもの。街で過ごす人たちが、公共空間でマーケットを開催したり、ライブを行ったりワクワクするようなユーザー経験の選択肢を増やすことで、街の楽しみ方が増え、過ごす時間も長くなり、次の楽しみへとつながっていく。だからこそ、様々な規制などで使えなくなっていた場所をみんなの居場所に変えていくことに意味がある。多様なスケールの空間・時間軸でパブリックスペースを最大限に活かす取り組みは、成熟した社会における必然ではないだろうか。

05:面白がろう! ~ 誰もが関わりたくなる街に ~

吉祥寺の良さは、必ずしもメジャーではない小さな要素でも必ず満たしてくれる懐の深さにある。高級住宅もあれば、B級グルメもあり、キラリと光る雑貨店もあれば、アニメオタクも、アイドルファンも受け入れてくれる。


ライフスタイルがより一層多様になってくる社会においては、それこそが大きなポテンシャルを秘めているとも言える。決してナンバーワンではないかもしれないけれど、身近な魅力が感じられる。惹きつけられるうちに街に関わってみたくなる。何かに決めつけて枠をはめるのではなく、様々な人の関わりを受け入れてくれる懐の深さは、結果として吉祥寺の良さをさらに伸ばすことになる。


都市とは、人の思いの集合体である。今や、都市を創る立場の側から一方的な考えを押し付けられるほど単純な社会環境ではない。ではどうするのか。それは、吉祥寺が将来にわたって、誰もが関わりたくなる街であり続けることだ。活力のある街にはたくさんの行動する面白い人間がいるもの。また魅力のある街は活力を生む面白い人間を引き寄せるものである。


街にとって大切なのは街のつくり手である一人ひとりが、様々な立ち位置で、それぞれの事業やプロジェクトに熱い思いを抱いてチャレンジすることであろう。そのチャレンジをもっと面白がりながら。






吉祥寺は良い街だ。私たちは、この稀有な街が将来においても賑わいを失わないで欲しいという願いから、吉祥寺ポリシー(吉祥寺将来価値の創造)の検討に取り組み始めた。当初は、誰もが共感できる街のポリシーと、それに基づいたビジョンの構築が必要なことだと考え、様々なリサーチやディスカッション、フォーラムなどを行ってきた。


しかし、検討を重ねる中で、目指すべきビジョンを固定化し、それに向かって一致団結してやっていこうという考え方に疑問を抱くようになった。さらに、万人に共感される都市の将来像は存在し得ない時代になったのではないか、そもそも道路や広場の計画はあったが、今言われるような街のビジョンを共有したことがあったのかと考えるようになった


共有すべきことは遠い将来像ではなく、これまで積み上げてきた吉祥寺のにぎわいの正体(アイデンティティー)ではないか。改めて、吉祥寺の街並みをゆっくりと眺めてみてほしい。共有すべきポリシーは、すでに街が持っている。それを再確認し共有することをまちづくりの土台にすることで「何をすべきか」「何をしてはいけないか」が自ずと明らかになるのではないだろうか。


各地で再開発が行われ「都市の均質化」がどんどん進んでいる。吉祥寺は都市の均質化に飲み込まれてはならない。今必要なのは、先人たちが築き上げた他の街にはない吉祥寺のアイデンティティーを磨き続けることと、新たなものを生み出すためにスピード感を持ってチャレンジし続けることだろう。



一般財団法人武蔵野市開発公社



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